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ファンがファンをつくる。「人の成長=会社の成長」を貫くジュエリーブランドの組織づくり
株式会社エーアンドエス
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小売・飲食
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301~500名
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経営者インタビュー
記事のポイント
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国内60店舗の心理的な距離を近くするために社内報を導入
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競争優位は店頭に立つジュエリーアドバイザーの販売力
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接客のコツからキャリアの情報まで従業員に届くように
ファッションジュエリーブランド「agete(アガット)」を展開する株式会社エーアンドエス。1990年のagete立ち上げによって「ファッションジュエリー」という新たな市場を切り拓き、現在は国内60店舗以上、海外40店舗以上へと販売網を広げ、売上は過去最高を更新している。
その成長を支えているのは、店頭に立つジュエリーアドバイザー一人ひとりの力だ。しかし、店舗が全国から海外へと広がるほど、経営と現場の距離は開いていく。同社は2025年4月にourlyを導入し、経営と現場、そして店舗同士の距離を縮める取り組みを続けている。
「現場が競争優位そのもの。だからすべては人なんです」。そう語る代表取締役社長の稲瀬さんに、人を強みにし続けるための組織づくりと、そこで社内報が果たしている役割を聞いた。
プロフィール
株式会社エーアンドエス 代表取締役社長:稲瀬 修 氏
2006年、agete営業職として入社。新規事業の課長を5年務めたのち、agete部長を歴任。2018年に執行役員、2020年に常務執行役員を経て、2021年より代表取締役社長。
──まず、ジュエリーブランドとしての御社の競争優位はどこにあるとお考えですか。
やっぱり現場の力です。
ジュエリーは、ひとつだけ身に着けられる方も多いですが、いくつかのデザインの商品をコーディネイトして身に着けることで印象が大きく変わります。うちはそのコーディネイトのご提案がブランドの根底にあって、それを店頭でうまく表現できているから、一点だけで終わらず、複数点をお選びいただくことが多いんです。同じ業種の似たようなブランドと比べても、ここは大きく違うところだと思います。
象徴的なのが、EC(Eコマース)の売上シェアです。agete(アガット)は、他のブランドさんと比べてEC売上シェアが圧倒的に低いんですよ。
──それは意外ですね。
他のブランドさんでは一点だけを選んで買う、という買い方が多いこともしばしばです。そうなると、便利なECのシェアが高くなるという構図になります。
でもうちは、ジュエリーアドバイザーが一人ひとりのお客様と向き合い、お客様にあったコーディネイトを提案してくれているからこそ、店頭でご購入してくださる方が多くいます。そのため、店舗との差は歴然です。
これは、現場が非常に強くやってくれている何よりの証だと思っています。

──その差を生んでいるものは何でしょうか。
すべては「人」ですね。
どれだけ効率的な仕組みが生まれても、AIやデジタルが進化しても、僕たちのこの商売のやり方には敵わないと思っています。人が成長すれば、会社も成長する。これが一番きれいな方程式だと思っていて、自分の中でもう揺るぎない答えなんです。
だから今ある制度も、その人が成長し続けられるための答え探しですし、それ以外にも打てる手を考え続けなければいけないと思っています。
──スタッフの力が、そのまま売上の差になって現れていると。
自分が買い物をするときのことを考えても、知識や当たり障りのない説明だけではなく、応対してくださった方から「本当にこのブランドが好き」、「商品の魅力を伝えたくてしょうがない」という想いが伝わってきたときに、この人が言うならと、もともと買うつもりのなかったものにまで興味が広がっていくのだと思います。
同じことが、店頭で起きているんだと思います。ジュエリーアドバイザーが誰よりもagete(アガット)のファンでいてくれる。その思いが接客に表れているから、お客様の心が動く。
つまり、ファンがファンをつくっているということです。
だから、販売力の高さは接客のテクニックによるものではないと思っているんです。自分たちが一番のファンであること。そこから、ジュエリーを売っている、アガットを売っているというだけではない力が生まれている。順番は、そういうことなんだと思います。
──人が競争優位そのものだとすると、その人がどう働くかで会社の強さが決まります。目指す組織の姿を教えてください。
端的に言うと、いろいろな役割の人がいる中で、みんながそれぞれ「自分たちの会社なんだ」と自発的に思ってもらえる組織にしたい。それがずっと自分の中にあるコンセプトです。
ただ、これがなかなか難しい。どこの会社でもそうだと思いますが、規模が大きくなって従業員が増えていくと、経営が方向性を決めて現場がそれを実行する、という形になりがちです。役割としては、もちろんそれで会社は動きます。でも私自身は、一人ひとりに「自分たちの会社なんだ」と強く思って動いてもらいたいんですよね。
──その思いの背景には何があるのでしょうか。
経営がすべてを決めて指示を出し、現場がそれを実行する。このやり方でも、成長はできるのかもしれません。実際、強いリーダーシップによって会社が大きくなってきた歴史もあります。
でも、それが持続的な成長につながるかというと、話は別だと思っているんです。
指示を出していた人がいなくなった瞬間に、その組織は止まってしまう。特定の誰かの力に頼っている会社では、次の世代にバトンが渡らないんですよね。
いろいろな人のバトンがつながっていくこと自体が自分の使命だと思っているので、自分の代で終わらせるつもりはまったくありません。次の人にいい形でバトンを渡すためにも、組織の意識をどう育てていくかは、6期目になる今もずっと試行錯誤しているところです。
──採用の場面にも、あえて出ないようにされていると伺いました。
そうですね、基本的に出ないようにしています。
自分が採用活動に出た場合に、あとから振り返って、「社長が決めた人たち」という構図にはしたくないなと思ったんです。
だから、できる限り出ない。信頼しているメンバーの目で、自分たちが選んだ、自分たちが良いと思った人を採用する。選ぶ側にも、自分たちで決めたという意識を持ってほしいと思っています。

──本社機能の名称を「サポートオフィス(SO)」に変更されています。その背景を教えてください。
我々の業種は小売業です。商品をつくるだけでは完結せず、自信を持ってつくった売り場で、スタッフが一生懸命お客様に向き合って、良い製品をお届けする。つまり、ファンをつくっていただくということに尽きるんです。
ところが「本社」「本部」という呼び方をすると、それだけで店頭との間に上下の関係があるように見えてしまう。そうなると、店頭は本部からの指示を待つ、という形になりがちなんですよね。そこを変えたかったというのが背景です。
自分たちが選んでいるのは、自信を持てる店舗を構えて、そこで目を輝かせているスタッフが、新たに目を輝かせるお客様を増やしていくという商売の仕方です。それが一番ダイレクトで、一番自分たちに合っている。
だとすれば、店頭とサポートオフィスは、どちらが上でも下でもなく、それぞれの役割を担っていく。サポートオフィスは、店頭が力を発揮できるように支える役割を担う組織であるべきだと考えています。

── 一方で、若手の早期離職は小売業に共通する課題です。
「最近の若い人は」という言い方で片づけたくない、というのが一番にあります。
自分も新卒のころは上の世代から「変わっているな」と言われた世代でしたし、今の若い方たちを見て、特に変わっているとも思いません。むしろ、情報をしっかり咀嚼して、自分の意思で会社を選んでいるなと思って見ています。
だからこそ、せっかく縁があって入社いただいたのに短い期間で退職されてしまうのは、企業側の問題だと思うんです。「ここに居ていいな」「ここに居たら自分はこうなれるのかな」と思える目標が、そもそも持てていない。
僕らの世代は、会社の中に決まった流れがあって、そこに乗っていれば進んでいけました。でも今の時代は、自分で行き先を決めて、自分の力で進んでいくことになる。だとすると、会社が示す選択肢が本人にとって納得できるものでなければ、外に出るという判断になってしまいます。
給与や休日といった条件も、もちろん大事です。ただ、それだけで「ここに居たい」と思ってもらえるわけではないんですよね。この会社で自分がどうなれるのか、何にやりがいを感じられるのか。そこに応えられているかどうかだと思っています。
──自分で行き先を決めるためには、その選択肢が見えている必要がありますね。
そうなんです。だから、「この先輩みたいになりたい」「あの上司みたいになりたい」と思ってもらえる人を、既存のスタッフの中から育てていく。それを見て、生き生きと働く後輩が増えていく。この図式しかないんだろうなと思っています。
自分たちの仕事に誇りを持ってほしいんですよね。見た目の素敵なジュエリーをつくって売っている会社、ではなくて、そのジュエリーに込めたものがあって、「私たちは社会を明るくしている」と言えるような。そこを読み解いて感じてくれると、もっと楽しくなるはずなんです。
──選択肢もロールモデルも、店舗に届いていなければ存在しないのと同じだと考えています。以前は、店舗への情報発信はどのようにされていたのでしょうか。
当時は、店舗に情報が押し寄せている状態でした。部署の数だけ発信元があるので、それぞれが1つずつ連絡しても、店舗側は相当な量を受け取ることになる。週1回の連絡書に統一しようとルールを決めても、急ぎの案件が出てきて結局毎日流れる。公式なもの以外は使わないと通知しても、結局メールで届く。そういうことが起こり続けていました。
つまり、店舗に届くのは、それぞれの部署から出てくる業務の連絡ばかりだったということです。
──業務の連絡は届いていても、会社が大事にしている価値観までは届いていなかった、ということでしょうか。ミッション・ビジョン・バリューは、現場にどう受け取られていたのでしょうか。
MVVは、社員からすれば「社長が考えたメッセージ」なんですよね。受け取ろうとしてくれてはいますが、それこそがまさに、さきほどの「誰かが決める」という構図なんです。
言葉としては覚えてもらえていて、書いてくださいと言えば書けると思います。ただ、書けたとしても、それが自分ごとになっているかというと、そうではない。
僕自身も過去の経験から、覚えることはできても、それが自分の言葉になっていたかというと、正直そうではなかったんですよね。掲げることも、覚えてもらうことも大切です。ただ、そこから先が本当に難しい。
僕の理想は、何かの仕事を振り返ったときに「あ、それってALL FOR FANs(オールフォーファンズ)だよね」と、日々の会話の中で自然に出てくる状態です。
だから今は、自分たちが大切にしたい言葉が、どれだけ日常のすぐそばにある状態をつくれるか。「どうすれば合言葉のように使ってもらえるかな」ということばかり考えています。
※ALL FOR FANs:株式会社エーアンドエスが掲げていらっしゃるValue

──そうした中で、ourlyの導入を意思決定されました。
押し寄せている情報を整理したいという実務的な狙いと、「伝わった」と感じられる状態をつくりたいという狙い。その両方がありました。
「伝えた」と「伝わった」は、やっぱり違うんですよね。そこをどうするかは、常に考えていたテーマでした。
──実際に導入されて、変化は感じられていますか。
店舗に届けられていたさまざまな情報が、かなり束ねられました。整理されて、自分自身も読みやすくなった。
それと、あとから振り返れるようになったことが大きいですね。表彰されたスタッフの記事や、休暇でどこかに出かけた話は、紙の社内報の時代から載せていました。ただ、冊子だと読み返すのが難しいんです。
今は「あの記事のあの人だよね」と、気になったときにもう一度読み返せる。社員同士の興味の持ち方が変わったんじゃないかと思います。
──それまで指示が中心だった店舗への発信に、「どこに、どんな人がいるのか」という情報が加わったということですね。
そうですね。誰がどんな接客でお客様に喜んでいただけたのか、どの店舗にどんな人がいるのか、どんなキャリアを歩んできた先輩がいるのか。そういうことが見えるようになりました。
さきほどの「この先輩みたいになりたい」という話も、まず知らなければ始まりません。全国に店舗が広がっている中で、その人たちを知る手段が、今はここにあるということだと思います。
──現場での反応はいかがですか。
店頭に立ち寄ったときの立ち話や、食事の席で、社内報に載っていた話題が自然に出てくるんですよ。「あの記事のあの話が」と、内容が具体的に出てくる。その場で「そんな記事があったかな」という人がいれば、みんなでスマートフォンを開いて確認する、という光景も生まれ、コミュニケーションにつながっています。
冊子の時代は「あとで読んでおくね」で終わってしまうことが多かったので、そこは大きく変わったところです。
そもそも紙の社内報でやりたかったのは、物理的な距離があっても心理的な距離は近くしたい、ということでした。それが今、より具体的な形で起きていると感じます。

──社長メッセージを毎月継続的に発信されていますが、トップが継続して書き続けている企業は実はそう多くありません。
ourlyがあるから始めたわけではなくて、メールの時代からずっと毎月書いていたんですよ。稲瀬という人間が少なくとも月に1回はこういうことを考えている、ということを伝えたかった。
今は届き方が変わって、読まれる数がかなり増えたという感じですね。

──なぜ、社長ご自身が発信し続けることにこだわられているのでしょうか。
どれだけ仕組みを整えても、心理的な距離は自然には埋まらないと思っているからです。どうすれば埋まるのかは、まだ自分の中でも答えがありません。ただ最近思うのは、まず自分から考えや人柄を見せていかないと、相手も理解しようとは思ってくれないな、ということです。
店長会や全社の場で話すときは、どうしても業績や方針の話になります。だから、部署ごとの食事の席などで少し砕けた話をすると、「稲瀬さんって、そういう方なんですね」と言われることが増えてきた。つまり、普段の場では自分という人間がまだ伝わっていないということなんですよね。
それを考えると、僕がourlyを一番活用して、自分自身を見せていかなければいけないのかなと思っています。
──最後に、今後の展望を聞かせてください。
一度やめてしまった連載があるのですが、もう一度復活させようかなと今思いました。少し肩の力を抜いた内容で、自分という人間を出してみる。すると「面白かったです」という声も、「あれは少しやりすぎではないですか」という声も返ってくる(笑)。毎月のメッセージとは違う反応が生まれるんですよね。
そうやって自分から出していくことでしか、心理的な距離は縮まっていかないのだと思います。
──社員の皆さんへのメッセージをお願いします。
それぞれに役割はありますが、自分たちのやっている仕事に誇りを持ってほしい。ジュエリーというアイテムを通じて、日本の方も世界の方も、身につけて前向きに活躍していただくエネルギー、原動力を自分たちがつくり続けているんだということを、誇りに思ってほしいんです。
一人ひとりができることは小さいかもしれない。でも、それが寄せ集まって力になっていくのが我々エーアンドエスだと思っています。そこを忘れずに、これからも一緒に頑張っていきたいですね。

株式会社ビットエー ourlyカンパニー 組織開発コンサルタント
菅原 みなみ
新卒より企業の外部広報およびコーポレートブランディング支援に従事し、企業価値向上に貢献。その後、ourly株式会社に参画。インナーコミュニケーション領域のスペシャリストとして、年間500社を超える企業に対し、エンゲージメント向上や組織活性化の戦略的アドバイザーを行う。 2024年からは組織開発コンサルタントとして、経営層と対峙し、経営戦略と連動した本質的な組織風土改革やエンゲージメント向上プロジェクトをリードしている。
<担当コンサルタントからのコメント>
多店舗展開する企業では、事業が成長するほど経営と現場の物理的な距離が広がり、それがそのまま心理的な距離になっていきます。しかもエーアンドエス様の場合、その現場こそが競争優位の源泉そのものです。競争優位を店頭に立つジュエリーアドバイザーの提案力だと言い切り、そこから「すべては人」という経営の答えまで一直線に繋げられる会社は、そう多くありません。
人が競争優位であるならば、その人が「ここに居たら自分はこうなれる」と描けるかどうかが、そのまま事業の強さに直結します。そのためには、選択肢もロールモデルも、まず本人に見えていなければなりません。各部署からの業務連絡だけが届く状態から、そこで働く人とその歩みが見える状態へ。稲瀬社長が取り組まれているのは、まさにその転換だと感じています。
働きやすさを整えることと、やりがいを感じられる状態をつくることは、別の課題です。前者は制度によって手当てできますが、後者は「この会社で自分がどうなれるのか」が本人に見えていなければ成立しません。私たちがお手伝いできるのは、その見え方をつくる部分です。これからも、皆様が誇りを持って働き続けられる環境づくりを、一番近くで伴走させていただきます。
ourlyでは、導入企業さまの事例をPDFにまとめています。
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